映画忘備録

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アクト・オブ・キリング:あまりにも有り得ないことが行われる異色のドキュメンタリー

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アクト・オブ・キリング」は1965年、時のインドネシア大統領・スカルノ*1スハルトのクーデターにより失脚、その後、旧勢力に対する「共産党員狩り」と称した大虐殺が行われ、100万人以上が殺害されたとされる、9月30日事件*2を追った作品。

当時、虐殺に関わった者たちを取材し、彼らにその時の行動をカメラの前で演じさせて再現するという手法をとったメタフィクション的な内容の異色のドキュメンタリー映画。

「9・30事件」について

この映画で扱われる「9・30事件」…日本では詳しく内容を知ってる人は少ないと思うのだが、簡単にいうとインドネシアで50年程前に政権交代時に民間人によって行われた100万人規模の大虐殺のことで、その全容は未だに判っていない。*3

また虐殺は現政権の後ろ盾で行われたため、虐殺に加担した人間は単純に”国を分断する悪いやつらを処罰した”と思っており、虐殺に何の問題意識も持っておらず、事件後50年経った現在も普通に一般市民として生活をしている*4というのが、この事件の特殊性である。

アクト・オブ・キリング」について

その内容を明らかにしようとしたのが、本作の監督であるジョシュア・オッペンハイマーで、当初は被害者側への取材を行っていたものの、報復を恐れて取材に応じる人間がいなかったため、逆に加害者側に取材を行ったのがこの「アクト・オブ・キリング」という作品、その取材期間は10年間に及んだという。

虐殺の再演

第二次世界大戦ナチスドイツの侵攻を防いだロシア兵は祖国を守った英雄であって、ドイツ兵を殺した罪の意識に苦しまない、同様に「9・30事件」の殺害者も罪の意識は無い。*5

それゆえ「具体的にはどうやって虐殺を行ったんですか?」と聞けば、過去の栄光を延々とループして話し続ける高齢者のように嬉々として話し始める。

それに留まらず「我々の歴史をちゃんと後世に残した方がいいな、それは意義あることだ!」とか言って、自分たちが過去に行った虐殺を映画として再現し始める。

その結果、虐殺の実行者たちに変化が訪れるが…というのがこの作品なのだが、詳しくは実際に見て欲しい。

凄いものを観た!という衝撃だけが残る

とにかく虐殺の再現演技がなぜかコメディ調だとか、完成した虐殺再現映画を国営放送に宣伝しはじめるとか、現実なのに現実感の全く欠如したメチャクチャな映像が満載されていて、”「アクト・オブ・キリング」を観たという体験”だけでも価値がある。

ということで、歴史的意義も非常にある「アクト・オブ・キリング」なのだが、基本的に説明なく進行するドキュメンタリーのため、前提となる基礎知識がないと事件の背景が全くわからず、最低限度は事前に説明する場面がないのが欠点といえる。

 

映画「アクト・オブ・キリング」|公式サイト

*1:この人の第三夫人だったのが、日本でも有名なデヴィ・スカルノ婦人

*2:インドネシア国内では「9月30日運動(Gerakan Tiga-puluh September)」略して「G-30-S」というらしい

*3:デヴィ・スカルノさん曰く「当時はこの事件の話をしても、誰も信じてくれなかった」とのこと

*4:この映画に出てくるのは完全に単なるチンピラだが

*5:ただしこっちは平時で非武装の民間人の虐殺である

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